彼は幼名をザヴェーリォ、という。古い家に生まれた。敬虔な神の児であるところの父母の間に、彼らの六番目の児として産まれた。サン・フランシスコ・ザヴェーリォ・サクラメント。彼が後のザビーである。
ザヴェーリォは幼少より神の教えを一身に受けて育つ。聖書を読み聖歌を口にし、隣人を慈しむ愛の児であった。身も心も神に捧げ、いつか来る裁きの日に新たな国を創る尖兵として選ばれるためならば、ザヴェーリォは努力を惜しまなかった。しかしザヴェーリォにはひとつの野心があった。それは清貧とはほど遠く、また神の児が抱くにはあまりにも俗塵じみたものだったが、それは日に日に膨らんではザヴェーリォを支配する。ザヴェーリォの望みは海の向こうにあった。まだ見ぬ黄金郷を掌握し、やがて自らの魂の内なる父にそれを捧げる。世界はこの国にとどまらないとザヴェーリォは知っていた。我が愛する父がその拠り所とするには、これしきの国などなんになろうか。父の玉座にふさわしい場所が必ずある。あの海の遥か向こうで、自分がそれを設えて待つのだ。それは愛の児ザヴェーリォが生涯を賭けるに値する望みであった。
ザヴェーリォは神のそもそもの本質を本能的に理解していた。神とはすなわち身の内に宿る王である。生命のほかのすべてを支配する、唯一無二の存在である。讃えられ祈られて、そればかりが、我が王の存在理由であるはずがない。あってはならない!ザヴェーリォは人生の半ばで早くもその答えにたどり着く。彼の生まれ持った好奇心と功名心が、この考えに拍車をかけた。神はいつでも己と共にある。己が身の内で、開花なるときを待っている。その考えはザヴェーリォをより高みへと向かわせた。学問を修め語学を修め、ザヴェーリォはついに海へ出る。彼の発つ数年前に、ポルトガルの宣教師が東洋の島国へ流れ着いたという話を聞いていた。まずはそこへ向かうつもりだった。東の黄金郷。神の玉座。そこへ君臨する王。青年期の円熟を迎えつつあるザヴェーリォにあるのは、はや老獪に近い野心のみであった。
海を越え、数ヵ月を費やして、ザヴェーリォはかの宣教師とおなじ小さな島国にたどり着く。気候も人柄も穏やかなその国は、ザヴェーリォが知るものとは全く違う生活が営まれていた。神と共に暮らす人々。それはザヴェーリォにとっての神の在り方とは異なるものだった。この国の人間は生活の至るところに神を見出だし、彼らがどのような出自の神であろうと等しく畏れ、敬い、それ以上に隣人のように愛していた。ザヴェーリォはその姿に感嘆し、驚愕し、絶望する。なんと、なんと憐れな。彼らは理性も意識も超えた崇高なるものの存在を知らぬまま、ただ得体の知れぬ異形の神に惑わされ、泥にまみれて暮らしている。支配されることの絶頂、極限、それに至れる日を四肢を焦がして待つ、あの至福の祈りの日々を、知らぬまま。知らぬまま。
野蛮な国だ。だからこそ父の火が必要だ。焼き尽くした更の大地に、一からその玉座を!築こう!
祈りと業火と布教のうちに、やがてザビーは知ることになる。この細やかな、吹けば飛ぶほどに小さな国に住まうものどものこころに巣食う、宝石ほどに不変なるまばゆいほどの武と魂の頂を。ザビーは恐怖した。この国はこのままではいけない。日ノ本は必ずや我らが神の国に牙を剥く。父よ、父よ。我が身に根を張る永遠の父よ。
排除すべきは誰なのでしょうか。
有神問答
戦国バサラ、ザビー。
一から十まで捏造です。
ザヴェーリォは幼少より神の教えを一身に受けて育つ。聖書を読み聖歌を口にし、隣人を慈しむ愛の児であった。身も心も神に捧げ、いつか来る裁きの日に新たな国を創る尖兵として選ばれるためならば、ザヴェーリォは努力を惜しまなかった。しかしザヴェーリォにはひとつの野心があった。それは清貧とはほど遠く、また神の児が抱くにはあまりにも俗塵じみたものだったが、それは日に日に膨らんではザヴェーリォを支配する。ザヴェーリォの望みは海の向こうにあった。まだ見ぬ黄金郷を掌握し、やがて自らの魂の内なる父にそれを捧げる。世界はこの国にとどまらないとザヴェーリォは知っていた。我が愛する父がその拠り所とするには、これしきの国などなんになろうか。父の玉座にふさわしい場所が必ずある。あの海の遥か向こうで、自分がそれを設えて待つのだ。それは愛の児ザヴェーリォが生涯を賭けるに値する望みであった。
ザヴェーリォは神のそもそもの本質を本能的に理解していた。神とはすなわち身の内に宿る王である。生命のほかのすべてを支配する、唯一無二の存在である。讃えられ祈られて、そればかりが、我が王の存在理由であるはずがない。あってはならない!ザヴェーリォは人生の半ばで早くもその答えにたどり着く。彼の生まれ持った好奇心と功名心が、この考えに拍車をかけた。神はいつでも己と共にある。己が身の内で、開花なるときを待っている。その考えはザヴェーリォをより高みへと向かわせた。学問を修め語学を修め、ザヴェーリォはついに海へ出る。彼の発つ数年前に、ポルトガルの宣教師が東洋の島国へ流れ着いたという話を聞いていた。まずはそこへ向かうつもりだった。東の黄金郷。神の玉座。そこへ君臨する王。青年期の円熟を迎えつつあるザヴェーリォにあるのは、はや老獪に近い野心のみであった。
海を越え、数ヵ月を費やして、ザヴェーリォはかの宣教師とおなじ小さな島国にたどり着く。気候も人柄も穏やかなその国は、ザヴェーリォが知るものとは全く違う生活が営まれていた。神と共に暮らす人々。それはザヴェーリォにとっての神の在り方とは異なるものだった。この国の人間は生活の至るところに神を見出だし、彼らがどのような出自の神であろうと等しく畏れ、敬い、それ以上に隣人のように愛していた。ザヴェーリォはその姿に感嘆し、驚愕し、絶望する。なんと、なんと憐れな。彼らは理性も意識も超えた崇高なるものの存在を知らぬまま、ただ得体の知れぬ異形の神に惑わされ、泥にまみれて暮らしている。支配されることの絶頂、極限、それに至れる日を四肢を焦がして待つ、あの至福の祈りの日々を、知らぬまま。知らぬまま。
野蛮な国だ。だからこそ父の火が必要だ。焼き尽くした更の大地に、一からその玉座を!築こう!
祈りと業火と布教のうちに、やがてザビーは知ることになる。この細やかな、吹けば飛ぶほどに小さな国に住まうものどものこころに巣食う、宝石ほどに不変なるまばゆいほどの武と魂の頂を。ザビーは恐怖した。この国はこのままではいけない。日ノ本は必ずや我らが神の国に牙を剥く。父よ、父よ。我が身に根を張る永遠の父よ。
排除すべきは誰なのでしょうか。
有神問答
戦国バサラ、ザビー。
一から十まで捏造です。
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