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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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(アタシの人生にもたらされた花束だ)

片手を広げた程度の小娘が滔々と語る為政論に打たれて膝まづいたのは心だったろうか頭だったろうか、それとも女にしか響き得ない器官だったか(、とはいえ自分もそのくらいの年齢だったわけだが)。ともあれあのときの彼女の言葉は天から舞い降りる福音にも等しく、砂の玉座で顎を上げた幼く稚拙な支配者の身も心も包んで打ちのめした。あの日あの瞬間、蛇崩乃音という愚かな支配者は死に、蛇崩乃音というひと振りの剣が生まれたことを、しかし彼女は知らなくてもよい。彼女のためでもあり、自分のためでもある。彼女を一番わかっていると自負すればするほど、不思議なほど同等の理解を賜る君主に膝まづくことのできる幸福と痛みを、他の誰が知っていようか。

義務教育最初の6年は、彼女がひと睨みしただけで残らず彼女に追従した。残酷な子どもたちは、自分よりもなお残酷なものをよくかぎ分ける。服を着た豚たちが腹を晒す、その中に咲き誇る彼女はとりわけ美しかった。
「これからは、わたし自らが手を下すこともあろう」
その言葉に、自然と口をついて出た。
わかっていますわ、「皐月様」
蛇崩乃音は彼女の友人であった蛇崩乃音を殺した。

彼女の手足は着実に増え、やがて四天王と呼ばれる精鋭に、当たり前のように選ばれてみせた。最初の、そして、最後の四天王となる覚悟だってある。彼女の剣になれるならば、彼女の剣でいられる限りは、何も怖くはない。
蛇崩乃音は自分の中のありとあらゆる恐怖を殺した。

「アンタえらく苛ついてるように見えるがね」
「そぉよ、ガマくんもイヌくんも不甲斐ないったらないわ」
そして。
暴虐はその限りを尽くされようとしている。たった1人の転校生によって。
「でも」
犬牟田が無様に伸される姿をすがめ、蛇崩は唇の端をニヤリと持ち上げた。
「もう終わりよ」
蛇は獲物を呑み込むとき、体が崩れるほどにあぎとを開く。彼女が賜った、最初の贈り物。
(お前はその名にふさわしく生きろ)

蛇崩乃音はその輝きを振り向くことはしない。
彼女は君主であり、希望であり、支配者であり、時に母である。
だからこそ、蛇崩乃音はもう何も望まない。
彼女の意思こそが、蛇崩乃音の意思である。

(皐月ちゃん)

(あなたは)

(アタシの)








彼女とわたしの事情
ぴくしぶ再録
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細い指が縫って日も浅い皮膚に痛かった。その指が冷たかったのもある。その指が優しかったのも。
猿投山せんぱい。
おう、と返事をすると、ざなげやばぜんぱいっ、と途端にくしゃくしゃに声が崩れた。
なにも言うな、と言うと、本当になにも言わなくなった。嗚咽としゃくり上げる声と洟をすする音と、あと、胸の辺りが温いだけだ。
胸元に顔を埋めて動かない満艦飾の、無星のくせにやけに艶やかで指通りのいい髪の毛に手のひらを滑らせた。満艦飾はなにも言えないに違いない。
目を塞いだのは自分の意思とはいえ、その直接の原因である纏は彼女の親友だ。その礼とばかりにさんざっぱら叩きのめしてやった直後に、なにかそれらしいことを言えるような生徒でないことは、不思議とよく知っている。
だから、そういうことでない、ことも、猿投山は知っている。
満艦飾の涙は、知人が知人によって傷ついたどうしようもないことに対する涙だ。例えば目を潰したのが、蟇郡だろうが犬牟田だろうが蛇崩だろうが、満艦飾はこうやって大っぴらに泣くのだろう。ぜんばいっ、などと、くしゃくしゃに崩れた声をして。纏の気持ちも、恐らくは、ちゃんと飲み込みながら。
そのくらい、わかっている。

纏に敗れた蟇郡がわざわざ無星連中を掻き分けて満艦飾の隣に座を占めるのを見て、猿投山は鼻で笑う。
「楽しそうねぇ山猿さん。よそ見なんて余裕じゃなァい」
蛇崩の嫌みを聞き流し(どうでもいいが、この女の声やしゃべり方はいつでも嫌に神経を逆撫でする。無意識ならば大したものだ)、適当にまあななどと言いながら、顔に巻き付けた布の下の縫い目を思う。そこに触れた満艦飾の指を思う。その指が冷たかったのも、その指が優しかったのも。
別に構わないのだ。そういうことでないことは、もうわかっているのだから。
満艦飾マコは、猿投山渦ではない誰かを、いつも選ぶに違いない。必ず。

それでもあの日の涙はおれのものだ。


(そのくらい、いいじゃないか)







不屈の民
ぴくしぶ再録
昔から髪の毛は長かったのは幼い頃の自分がいつか髷を結わくためにそうしようと決めたことだったのかもしれないが、結局今までに一度も月代は剃らず髷も結わず、かと言ってざんぎりにすることもないまま髪の毛だけ黒ぐろと伸ばし続けている。月のない丑三ツなどには枕元に凪の海のように広がるのだがそれをごく稀に死神がかき混ぜに来る。枕元に膝を折って指先を髪の毛の中に落とし、ゆるゆると渦でも作るようにかき混ぜるその所作はなんとはなしに丹念に泡立てられたさみどりの抹茶を思い起こさせる。声もなく飽きもせずによくもまぁ、とは思わないでもないが、今すぐなにがしかを取立てにきたわけでもないのならと奇妙に鷹揚に構えたまま放ったらかしておくのが常だった。死神はそのうち来るとき同様音もなく帰っていく。そういうことのあった夜明けは、決まって桂の心を晴れやかにした。そういうことのあった夜明けは、決まって薔薇色に燃えるように美しいからかもしれない。その他には特に理由もない。理由もないから、来訪を望むこともない。
たんたんと無邪気な足音が廊下を離れていって、やがてぴしゃんと扉が閉じるその音はいつもほんの少しばかり部屋の空気を翳らせる。あの少女は桂の訪問を嫌がらない。手土産ついでに懐に隠した菓子を根こそぎ渡してやると上機嫌にころころと笑ったりもするのだ。よい饅頭よりも安い駄菓子を喜ぶ少女の健やかさには、なんとはなしにからだの奥の辺りが温まる心地がする。ソファにだらしなく寝そべってつま先でふくらはぎを掻きながら唸っている(便宜上)雇い主をどう思っているやら。昔から言うことではあるが類は友を呼んでしまうのが世の常でもある。顔にかぶせられた新聞紙の隙間から漏れる呼気に酒精を嗅いで、懐手のまま小さく洟を啜る。しかしこの男はいつも、桂が側に来ると自分から目を覚ますのだった。不思議なことに。やがて酒臭いからだがのそりと起きる。ばさ、と床で広がる新聞紙を踏みつけて立ち上がる銀時がいつもの冴えない天然パーマだったので、少し安心する。
怖いのは自分のたましいが冥土に遣られてしまうことではなく、自分とともに歩む輩が、かつての代償に取り上げられてしまうことだ。なんだよ土産とかねーのかよ、と、ようよう座り直した銀時がぶつくさとのたまう。土産はあったが全部食われた旨を伝えるとジャイアニズムがどうの今朝の朝食がどうのと一頻り苛立って、それで、とそこでまたやっと戻ってくる。なんか用。気づけば前のめりになった銀時の顔がさっきよりも近くて桂はなぜか少しだけ怯む。銀時。あん?いちいち閨まで来なくても構わない。はぁ?貴様が寂しいのなら俺が出向いてやる。だからいちいち来てくれなくても構わない。銀時は口を曲げたまま少し沈黙し、オメーなに言ってんだ、と心底ばかにしたように言った。その口から溢れる酒臭い呼気。怖いのは、喪うことだ。自分ひとつのたましいでは償いきれないことを成してしまった代償に、あのとき奪った以上のものを取り上げられてしまうことが、なにより怖いのだ。銀時は不機嫌な顔をする。徐にその手が伸びて、羽織の上から桂の二の腕を掴んだ。
月のない丑三ツには稀に死神が桂の髪の毛をかき混ぜにやって来る。桂はその間、黙って天井を眺めている。いっそ切ってしまおうかと思ったが、これと言って不満もないので結局はいつまでも冥土の川のように黒ぐろと長いままの髪の毛だ。いくら寂しいからとて、わざわざ閨まで来てくれなくても構わないのに、と思う。昔から口にはしないが寂しがりだったあれが、あの戦乱の日々の中、稀にこうやって桂の髪の毛をかき混ぜにやって来ていたことを、桂は知っている。言葉はない。視線を交わすこともない。分かち合うこともしなければ、置いてゆくこともしない。ただ言葉にならないものものを、ゆっくりとゆっくりと薄めるように。髪の毛に触れた指先から、ゆっくりとゆっくりと沈んでいくように。掴まれた二の腕がてのひらの形にあつい。こちらから出向くのは吝かではないと言うに、死神はなおも桂の髪の毛をかき混ぜに来る。薔薇色に燃えるように明けるに違いない夜は、これから永遠ほども続くように思えた。
死神は坂田銀時の顔をしている。







さまよえる善善男
銀魂
ぴくしぶ再録
※叛逆ネタバレ有※




世界とは親友の一握であった。

杏子が窓の外を見ながら少し頭を揺らしてリズムを取っているので、頭の中のあのゲームで遊んでいるのだなと気づいて視線をずらす。りぼんをほどいた杏子の髪の毛はいつもまとまりなくばさばさと広がるが、櫛の歯を毛先まで実にすんなりと通す。素直でないふりをして甘いくらい素直な、杏子の髪の毛は杏子そのものだ。風呂上がりの少し湿った髪の毛からは自分と同じ匂いが漂う。ルームウェアから覗くしろい手足。ほどかれたりぼんは髪留めと並んで机に置かれている。風見野から持ってきた数少ない杏子の私物。
はやく宿題やっちゃいなよ、と口では言うものの、本当はどちらでも構わないと思っている。杏子は、そういうことではあまり困らない。彼女にとってなんの役に立つのかわからないような、学校とか、授業とか、きまりとかでは。そして自分がなんと言ったところで、杏子がやらないと見切りをつけたなら宿題などはまっさらのまま鞄に投げ込まれることになる。必ず。とはいえ(、とノートを引っ掻くペンの音を聴きながら思うのは)、自分が言ってやらねばならないことなのだ、という使命感。
使命。それを持って戻ってきた役割の為すべき、ほんの些細なことにすぎない。それは。なくてもいいような。でも。
顔をあげて、きょおこ、と語気を強めると、杏子はこちらを見て、ニシ、と笑った。たぶん誤魔化すために。その拍子に八重歯が覗く。今日は静かな夜だ。不気味なほどに。静かであればあるほど不気味に感じるのは何故か。平和と秩序の眠りに沈むこの街ですら、よじれた願いの産物であるせいか。
なんの役に立つのかわからない、ような事柄では困りもしない杏子は、あの世界では、たぶん、困り果てていた。使命。魔法。祈り。救済。そして犠牲。犠牲。また犠牲。自分のためにしか魔法を使わなかった杏子は、他人のために自分を使った。最期には、そのいのちすら。自分の独り善がりと絶望が奪ったもの。
親友の祈りで書き換えられたはずの世界の、しかし砂糖が溶けるようにぬるいうたた寝のようなこの街に招かれ、そこで誂えられた人びとを見て、その底にある強い願いと呪いを見て、そこで初めて、杏子と出会ったような気がしている。誰にとっても幸福な街で、窓の外を見ながら少し頭を揺らす杏子。杏子はこれしきを望んでいたのだ。自分がすべきことをくじかれそうなほどに小さな、たったこれしきの、些細な、本当に些細でつまらない、これしきのことを。
「杏子」
なんだよ、とぶちぶちこぼしながらも、存外大人しく鞄を開けて教科書とノートを取り出す。杏子の望み。杏子の居場所。それを隣に広げ、わかんないとこは教えろよな、と唇をとがらせる。杏子。杏子の望み。杏子が本当にほしかったもの。それを叶えられるのは、美樹さやかだけなのだ。あの世界でも。今も。
いつかさよならを言うときが来る。必ず。その日までは、ここは杏子のお菓子の家だ。












お菓子の家
さやかと杏子。
「そういうの中にごきぶりとかいるらしいから飲まない方がいいよ」ラウンジに設置されたカップ式のドリンクサーバに伸ばしかけた指を止める。「そういえばおれは小銭がないんでした」「なんで」「大阪でボられた」「馬っ鹿じゃないの」ぺたんとした背もたれのないソファにまたがるようにアイリが座ったのでダイチもそのソファに腰かけた。タバコの焼け焦げだろうか穴から指をつっこむと触れるスポンジは随分詰まっている。あまり現場環境に気を配るタイプの上役でないのは見て取れるのでなんとはなしに穴をぐりぐりやりながらぽかんと宙など眺めてみる。「新田しゃんどこかな」「知らないわよ」「寂しい」「あんたイオちゃんのこと好きなの」「いやーそれは、どーーーーーっでしょーかね」「はぁ?」「なんつか好き?とは違う気がするのねおれ的に」「なにそれ」「そういう伴だってさ、ほれ、ジュンゴとさ」「あれはそういうんじゃないし」「じゃあなに」「友だちいなさそうだったからつるんであげただけ」「なるほどねん」無敵の説得力だ、と思う。「それって好きに
ならないの」「さぁ。ならないんじゃないの」「なんで」「そもそもジュンゴにもそういうのあるのかわかんないじゃん」「いやっそこはあるだろ普通に。男だし」「はぁ?男ならなるの?意味わかんない」わかんないわかんないとアイリが頭を振る度にマフラーがゆさゆさと揺れる。「じゃああんただってイオちゃんのこと好きになるってことじゃん」「あーそれはとてもあり得るすごく」自分で振っておきながら怯んだようにアイリが言葉を切るのでダイチは少し後悔した。ダイチは、変な沈黙、とかが苦手な人間だ。
「だってさぁこういう状況だしさぁほんとおれとか生存本能ビンビンなわけよ」「それって」と言いかけてアイリは察したらしい。目の周りがかあっと見る間に赤くなるのはなかなかこう悪くない、などと思っている間にキモーーーーーーい!!とアイリが絶叫するのでダイチは吹き出した。「うわバカでかい声出すなって!」「キモいキモいキモいキモい近寄らないで!」「いやいやそんな普通だってだいじょぶだって!」ずざざ、とソファを後じさるアイリを追いかけて必死に言い募るとアイリはようやく黙った。誰も来る気配がない、ということは本当にみんな出払っているらしい。なんだか変な気持ちになるなぁと自分を茶化しながらダイチはふへっと笑った。「なにがおかしいのよ」「いや別に」「なに」「いやーおれらなんの話してんのかなって。こんなときに」「まぁね」「で」「今度はなに」「伴さぁもしジュンゴに告られたらどうする」「あたし?ないない。ジュンゴはフミとかヒナポッポみたいのが好きなの」早い話がそういう傾向なのだろう。「なんで知ってんの」「自分で
言ってた」「ぶぇっあいつバカじゃねえの」「バカよ。知らなかった?」よく知っていたつもりではあったが改めて聞くとなかなか脱力する話である。
「んじゃさ新田しゃんがおれに告られたらどうすると思う」アイリはすかさずわかんないわよとトーンの高い声を上げる。見たら拳を肩の位置まで挙げていた。どうやらジュンゴにする要領で殴るつもりだったらしい。グーで。「でもさ」でもすぐに声が落ち込むのでわかってしまう。「わかんないけど、どうだろ」たぶんアイリも同じことを考えている、と気づいてしまうのは少しかなしい。イオはいつも彼の背中を見ているからだ。「好きってむじかしーよな」アイリはちょっと黙って、そうかもね、と言った。その声がいつになく優しく柔らかかったので、あー変な気持ちになるなぁ、とダイチは頭をかく。そんなときにあーっとアイリが叫ぶのでびくりと顔を上げるといつの間に現れたやら峰津院がドリンクサーバからコーヒーを取り出していた。「あ、ごきぶり」ダイチの声にごきぶり?と眉をひそめ、峰津院はあきれ返ったように鼻から息を吐く。「こんな緊急事態に騒動のただ中に留まる虫があるか」あー、と感嘆の声はぴったり同時に上がったのでなんだか余計に変な気持ちになる
なぁ、なんて峰津院がコーヒーを飲みながら去っていくのをあれ変な人だよねえなどと言いながら見ているアイリの耳の後ろが白いので、ぎっちり詰まったスポンジの上でやむを得ない生存本能がビンビンなのである。









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