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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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髪の毛を焼き切りそうなほどの質量を携えて頬を打つ熱風を、揺らぐ景色もろとも切り裂いて駆け抜ける。反射で吸い込んでしまった熱そのものに鼻の奥と喉の奥の粘膜が焼け焦げるのを感じながら、最後の一歩を踏み込むと同時に拳を握って撃ち下ろした。拳が彼に触れる寸前に、斥力に阻まれるようにそのエネルギーはそっくりそのままマコトに跳ね返る。右腕の肘から下を粉々に砕かれた感触に、喉の奥で悲鳴が弾け、それと同時にパラスアテナが翼を翻してマコトを包み、素早く彼から引き離した。黒いコートの背中は振り返ることもせず、ただひたすらに明後日の方を見つめている。その内側に黒く重たい意思を抱いた、彼は今やひとつのブラックホールのようにも見えた。相対するだけで全身の皮膚がちりつくような、ヤマトの威圧は時間とともにますます強くなる。世界の全てを睥睨するかのごときヤマトの視線を一身に浴びてもなお動ずることのない、真っしろな、若い葦にも似た少年を押し潰さんとするかのように。
龍脈の力を刻々と取り込み力を増すヤマトは、左右に控えたレミエルとアリオクを容赦なくけしかける。しかし彼はものともせず、自らの悪魔でそれらを受け止め、ヤマトを静かに見つめ返したままに凌いで見せた。ヤマトが放つプレッシャーは悪魔ですら膝を折るほどに強まり、風が徐々に死の香りを深めていく。後ろではジュンゴとフミが悪魔たちを下していき、それとともに2人は傷ついていく。元々長く持たせるつもりのない戦いではあった。マコトが一番槍としてヤマトと当たること(、そして可能であれば道連れにすること、)を望んだのも、そのためであった。長引けば長引くほど不利になるこの戦いで、役に立てるとしたらそれしかないと思ったのだった。ヤマトの前ではマコトの力など取るに足らないものであることも、ヤマトの目標が彼ただひとりであることも理解してはいた。それでも仲間たちはマコトの気持ちを汲み、申し出を飲んでくれた。命を懸けてでもヤマトに伝えたいことがある。無惨にも跳ね返された一撃は、まだ、たったの一撃でしかない。
ジプスに入ってからは、自分も含めたジプスの人間の不甲斐なさに忸怩たる思いを噛み締めるばかりの日々であった。セプテントリオンからの試練が始まってからは、特に。力のない人間はせめて峰津院の手となり足となり剣となり盾となり、明日の世界の礎となることを喜びとして全てを捧げることを望まれていた。それすら叶えられず、羽虫のように散っていく人間に、一瞥もくれなかったヤマトに、マコトは絶望した。ヤマトの冷たさ、非道さにではない。ヤマトの望む未来の糧にすらなれない自分たちにである。ヤマトの望むまま、ヤマトの目指すまま、その傍らに全てを棄てて付き従うと決めていたマコトのアイデンティティは揺らいだ。ヤマトのためになれない自分には、生きる価値など。他にも生きる道があると説き、一緒に戦うことを望んでくれた彼の手を取っても、マコトの中のうつろは消えることはなかった。ヤマトの理想ばかりが思考を滑る。強いものだけが、選ばれたものだけが、明日を生きることのできる、そんな、世界を。
炎が吹き荒れ、氷や稲妻が空気を引き裂いて無慈悲に殺戮し、破壊し、打ち砕く。ヤマトは戦っている。たったひとりで。ヤマトの世界はここだ。ここにある。マコトは拳を握る。強い敵をなぎ払い、犠牲に犠牲を重ね、そうしてヤマトはひとりになっていく。孤独になっていく。かしづくものもない荒野の中の朽ちた玉座に、力の世とともに君臨し、それから。マコトは一歩踏み出す。ヤマトの明日はそこにある。それは。(それは)マコトですら従えない、遠い遠い場所だ。暗く、寂しく、惨めな場所だ。マコトはそんな世界では生きられない。そんな場所に、万能の王のような顔をして君臨するヤマトを、マコトは見たくない。マコトさん!彼の声が澄みきった光のように、爆音を切り裂いてマコトを打つ。ヤマトは戦っている。このままなら、ヤマトは敗けるだろう。力に疲れ果てたヤマト。ヤマトの世界は。マコトは駆ける。右腕が燃えるように熱い。ヤマトは振り向きもしない。ヤマトの目は彼しか見ていない。ヤマトの望みは、もう。
ヤマトの望む、強いものが生きる世界。そんな世界に生きられないならば。そんな世界を望まないならば。
「王は死ぬべきである」











王者死すべし
ヤマトとマコト。
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