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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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白い。と呻いたような気がしてフミは肩越しに振り向く。両手をきちんとひじ掛けに乗せてやけに背筋をまっ直ぐに伸ばした実験体が、目を中途半端に開いてこちらを見ていた。なぜか一般平均の九割程度しかまばたきをしない(とはいえ男は通常まばたきが少ないものだが、それにしても眼球が乾きそうで不愉快だ)ジュンゴの虹彩は揺れもぶれもしていないので、やはりこちらを見ているのだろうと嫌々ながらに推測し、フミは細い眉をぎゅっとしかめた。表情筋が正常に働いていないのではないかと疑わしいほどにこの男はいつも同じ顔をしている。いつも、などと言えるほど、行動を共にしているわけでもないのだが。ともあれフミが眉をしかめて見せても、その意味を理解していないのか、やはり目を反らすこともなくまばたきもせず、いつもと同じのっぺりとした無表情がこちらを見返してくるのでますます疎ましい。頑丈だし従順だし静かなもので実験体には向いているのかとも思ったが、買い被りだったのかもしれない。
しばらく睨めつけてもうんともすんとも言わないジュンゴに愛想を尽かし、再び計器に向かう。コンソールに指を這わせて暫し、爆風が頬を撫でる。出てきた数値を記録して振り向くと、床に這ったジュンゴが吹き飛んだ帽子をたぐり寄せてかぶり直すのが見えた。爆発した。あーまあね。なんで爆発するの。フミは細い指で生え際を軽く擦る。召喚アプリ起動時の生体変化を探るためにそこの装置であんたの体に帯電イオンを流してる。人体って七割水だからね。左右の電極から陽陰別々に流して、アプリ起動時に変化が起きたら反応・数値化できるようにする。あと、悪魔も情報とはいえたんぱく質で構成されてるわけだから、理論上はアプリを起動することで悪魔として生成される情報をその前段階で電離させて帯電イオンに変換することが可能なわけ。ついでにその変換を擬似的にやってる。変換された帯電イオンと人工的に流した電流の衝突やそれによる反応でアプリ起動時の肉体的影響や負担も同時に調べてるわけね。そのときあんたの体の一部が電解質化して、帯電イオンに変換され
た悪魔の情報と流してるイオンが引き寄せられて電気的摩擦を起こす。そんで爆発。ま理にかなってるでしょ。んん。ジュンゴはしばらく考えるように首を傾げていたが、結局は黙って椅子にかけなおす。バカは考えるだけ無駄だよ。思考は熱量を奪うから。そう言ってやったがやはり反応はない。煤けた頬をしたジュンゴ。
まだするの。んー。ディスプレイに目を落とす。数値は足りないが機器疲労が大きい。んや今日はおしまい。チューンアップしたらまた呼ぶ。バイバイ。ん。ジュンゴ平気。いつでも呼んで。さてとと頭を切り替えて(ついでにジュンゴも無視して)出た数値を眺めたが、一向に扉の開閉音がしない。ちらと隣を見るとでくの坊よろしくジュンゴが突っ立っている。なに。邪魔なんだけど。ん。ジュンゴは真剣な顔をしている。さっきの実験、フミの役に立った。あ?あーまぁ役に立ってないことはない。正確にはこれから役に立つ。ん。ジュンゴは煤けた頬をそっと笑わせる。フミ。唐突に伸びてきた手にぎくりと体をこわばらせる。思わず携帯を握りしめたフミの手を、ジュンゴの大きな手のひらがそっと包んだ。フミ、白い。ああ。メラニンが足りない。インドアだから。ほほ、と笑ってやると、ジュンゴもわけがわからぬなりにつられて少し笑う。ジュンゴの乾いて煤けた顔と手と静かな目と薄れゆく焦げ臭さとなのめに差し込む陽の穏やかな、破滅的な日常にも関わらずまるで
あつらえられたように奇妙に、穏やかな。
白い、と言われたのは初めてだったと気づいたのはその日の寝しなだった。役に立たなくてもいいのだ、と、言ってくれた人はまだいない。







ブリリアントな曲線
ジュンゴとフミ
ぴっしぶ再録
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