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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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誕生日にりぼんのついたヘアゴムを贈った同じ日に、姉がよこしたのはおもちゃの拳銃だった。ピンク色の水玉模様の、その当時彼女が持っていたワンピースに一番似合うヘアゴムは、結局一度も姉の髪には飾られることはなく、それからのその日は彼女にとって気の鬱ぐだけの日になった。姉がよこしたおもちゃの拳銃は学園に入る前に家から持ってきた。今も手元にある。家では埃をかぶるばかりだったばか臭いおもちゃが、気づけば彼女の心を強くしていたことに気づく。気づかなければよかったと思った。安っぽい銀玉鉄砲。あれは当時姉の気に入りのものだった。拳銃をもらった自分は果たして喜んだのか嘆いたのか、それが今でも思い出せない。りぼんのついたヘアゴムを受け取った姉が喜んだのか嘆いたのか、それを思い出せないのと同じように。しかし確かに挫折の始まりはここだった。そんなことには今でも気づかないふりをしていられる自分が誰よりなによりばか臭い、と彼女は思っている。
気は鬱ぐがその日は年に一度必ずやってきて、必ず彼女をひどく傷つけた。ヘアゴムの次はおもちゃの指輪を贈った。きれいな海色のがらすのついた指輪だったように記憶している。姉からは小さな戦闘機のプラモデルを貰った。その行方は覚えていないので、もうどこにもないかもしれない。姉というのは昔から掴み所のないひとで、その印象は彼女の中で影のように奇妙にぼやけたままだ。今もなお。優しいのか優しくないのかすら曖昧だが、少なくとも邪険にされたことはなかったように思う。彼女も同じだった。姉に優しくした記憶もなかったが、疎んじていたわけでもない。ただ、自分と姉の容姿が似ていることと、誕生日が来ることだけが耐えられなかった。努力家の姉と爛漫な妹で、いつまでもいられたならば、それにも耐えられたのかもしれない。いつか分かたれると気づいていたからこそ。彼女は長いつけまつ毛の目を伏せる。耐えられなくなったのだ、と。
姉には夢があった。そのために姉は彼女の前から消え失せた。さよならも言わずに。どうせならそのときに別れてくれればよかったと思う。姉は姉が無表情でよこす拳銃や戦闘機そのもののような人間だった。彼女の心にはなにひとつ引っ掛からない。会話も気持ちもうまく馴染まなかった。お互いがなにを考えているか、知ろうともしなかった。今思えば、似ているだけの容姿が皮肉なほどに。ばか臭い。彼女はおもちゃの拳銃を指先でくるくると回す。モニタには安っぽいドラマのような殺害現場が映し出されていた。死体が発見されました!定型文アナウンスはあらかじめ吹き込んである。恐怖に、困惑に、嫌悪に、絶望に、かつての友人たちの顔が歪む。ここまでくればただの茶番だ。もうそろそろ諦めればいいのに。彼女は首を反らし、こめかみにおもちゃの拳銃を押し当てる。引き金は引かない。それを引くのは、すべてが済んでからと決めている。
彼女が最後の誕生日に姉に贈ったのは、真っ赤なエナメルの付け爪だった。姉からの贈り物はまだ届いていない。









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