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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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いつから彼がそこにいたのかはわからないが、気づいたら彼の場所に足を運ぶのが習慣になっていた。彼はいつもひっそりとうずくまるように座っている。広場の階段の隅であったり、モニュメントの近くのベンチだったり。人混みからわずかに離れた場所に、彼はいつもひとりで座っている。ひっそりと、うずくまるように。そして誰もが彼に気づかないように通りすぎていく。彼の髪の毛は桜のような色をしていて、遠目で見ても恐ろしく目立つというのに。響は長い脚をいっぱいに使って駆けると、あっという間に彼の隣に座を占めた。そうしてはじめて気づくように、彼の柔和な顔が響を見る。学校はもう終わりですか。うん。響は生返事ぎみに頷くと、膝に置いた鞄をかき回した。帰りしな買ったキャラメルメロンパンの袋が、教科書の間でくちゃくちゃに潰れている。紙の袋をばりばりと破り、スカートにざらめの溢れるにも頓着せずに響は出てきたメロンパンをふたつに割った。あげる。彼は意外そうな顔をして、それでもありがとうとそれを受け取った。
響がメロンパンにかじりつくのを待ってから、彼もパンを口に運ぶ。はみ出たクリームの指につくのを舐めながら、響はそのくたびれた横顔を盗み見た。あんまり若くないな、と思う。パパとどっちが年上だろう、と。目の下に隈がある。彼がまばたきをするたびに、そこがわずかに引きつるように動いた。量の多くゆるやかにうねる髪の毛も、濃い眉も、垂れた目の奥の瞳も、覚めるほど鮮やかなピンク色をしている。なんて目立つあたまなんだとじっと彼を見ていると、ふとこちらを向いた彼と目が合った。へへっと笑うと彼もふにゃりと笑った。笑顔はパパよりずっと若い(、というか、幼い)、と思う。ごちそうさまです。彼は手に残ったざらめをさらさらとはたき落とす。どういたしまして。指を舐めながら答えると、彼は着ている白いブラウスの袖を伸ばして、響の顔に手を伸ばした。ついていますよ。口の脇についたクリームとざらめを拭われて、響はまばたきをする。ありがとう。どういたしまして。彼はまたふにゃりと崩れるように笑った。
響はハンカチで手を拭うと、優しいんだね、と言った。その手で彼の袖を引き、乾いた手を取って袖をじっと見下ろす。汚れちゃった。気にすることありませんよと彼は本当になんでもなさそうに言った。あれはいつだったろうか。歌が苦手なんですと彼は言った。冷たい風の吹いたかはたれ。もう暗くなる街の灯の、あえかに揺れる春の終わり。いつから彼がそこにいたのかはわからないが、それが初めてでは、おそらく、なかったような気がする。わたしの友だちがさ。響は彼の手を取ったまま言う。カップケーキ作るのが上手でね。へえ、と彼の声がする。響の視線は彼の手に落ちたまま、ゆるやかにそのくたびれた手をなぞる。今度もらってくるよ。また一緒に食べよう。投げ出した響の靴の先を風が吹く。甘いの、好きでしょう。そう言って彼の顔を見る。柔和に微笑む横顔。もう帰らないと。まるで子どもみたいなことを言うと、彼は響の手を取って立たせた。また明日ね。響の素直な声に彼は手を振る。
約束に意味はないけれど、それを重ねる限り、昨日を繰り返すようにまた会えるのだと、どちらからともなくそうするようになった。いつからそこにいたのかわからない彼と、いつ出会ったのかも思い出せない響が、昨日の延長をぐずぐずと寄り添うことはそう不幸なことでもなかった。楽譜の端の繰り返し記号に跳ね返されるように、ただ昨日に戻るだけの明日ではあったけれど。彼の目立って仕方がないあたまはいつの間にかどこにも見えない。はにかむように言った、歌が苦手なんだという言葉を思い出す。同じだね、と響は言った。あのとき。わたしもピアノが苦手。彼はなんと言ったろう。どうしてもその先を思い出せずに、何気なくスカートをはたくと、落ちきらなかったざらめがつぶつぶと溢れた。繰り返すのは悪いことではないと響は思う。いつ出会ったのかも思い出せない彼が、いついなくなっても不思議はない。いつか彼を望まなくなる日が来たら、二度と会えなくなるのだと気づいていた。











輝かない
スイプリ。響とファルセット。
いろいろ超次元設定。
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