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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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不二咲千尋のいいところはよく笑いよく泣くところだ。と、以前そういう内容のことを言っていたと友人伝いに聞いてから、江ノ島盾子は不二咲の憧れの女になった。何事も真面目に、必要以上に真面目に考え込んでしまう不二咲よりも、何倍もきれいな笑顔で江ノ島が笑っていたからかもしれない。いつも、いつでも。江ノ島盾子というのは底抜けに明るくまた底抜けに優しく、それでいて甘えたところや媚びたところなど微塵も見せない、女神のような少女だった。勉強こそ不二咲が大きく彼女を引き離していたが、それ以外の部分では、彼女に勝っている点など自分にはないと不二咲は思っている。すらりと伸びた手足に美しい髪と顔。申し分なく恵まれた身体。それを誇ることもしない、ひまわりのような江ノ島。そうして考え込む不二咲を見てまた江ノ島はひまわりのように笑う。不二咲はほんとにいい子だね、と。だからあたしは不二咲が好きだよと、江ノ島は誰憚ること堂々と言ってのけた。いつでも。
あくまでも彼女は憧れであり尊敬でありあるいはしても栓ない卑下に根差した甘だるい崇拝の対照であった。そこに幾ばくの親愛もないことを、不二咲以外の誰が知り得ただろう。もしくは他に不二咲が江ノ島盾子を憧れや尊敬で遠ざけようとしていることを、知っていた人間がいただろうか。不二咲と、江ノ島盾子の他に、誰が。よく笑いよく泣く不二咲にも信頼に足る友がいて、どこかで会えば声をかけあえる友人ならばそれよりも多くいた。不二咲は決して孤独な人間ではなかったはずだ。それなのになぜ、と思う。なぜ江ノ島にはそれが見透かされていたのだろう。不二咲の緩やかな孤独を渦のようにやわらかにかき混ぜるしなやかな白い手は、いつの間にか江ノ島のそれになっている。美しい江ノ島盾子。彼女を遠ざける理由を、不二咲にはうまく説明できない。不二咲の胸の奥の奥に鍵をかけて隠してあるものを、盾子の美しい目がいつでもじっと見ているように思えていたからかもしれない。またはそれさえも幻想であった。
光の前に立ち竦むことは怖い。不二咲の信頼に足る友は、よく笑いよく泣く不二咲を笑顔で光の前に追いやる。目を射るほどに眩しい暴力的圧倒的な真実の前では、泣いても笑っても隠し事などはできないのだ。仲よくしてやってくれという無責任な言葉のあとに、あたしと不二咲はもう仲いいじゃんクラスメイトだし、という能天気な江ノ島の声が響いたとき、自分がどんな顔をしているのかさえ不二咲に想像する余裕はなかった。ただ、そのとき不二咲の脳内を支配していた恐怖は、江ノ島がこちらを向いてにこりと笑った瞬間にかき消えた。ひまわりのような、江ノ島盾子。不二咲を江ノ島に託して気を利かせたつもりか先に帰ってしまった友の背を、先ほどまではあんなに恋しがっていたのに。そんなに怖がらないでよ。江ノ島は困ったように笑う。あー、あたしでかいし声うるさいけど、噛みついたりとかしないから。不二咲はおずおずと笑う。江ノ島さん、迷惑じゃない?迷惑?ぜーんぜん。そう言って江ノ島はまた笑う。
紋土も怜恩も悪いやつじゃないけど気ぃ利かないねーやっぱバカだから。江ノ島の言葉に不二咲はくすくすと笑う。ボクふたりとも好きだよ。ふたりともすごく優しい。へーえ、と見上げた江ノ島の横顔が驚くほど優しく微笑んでいて、不二咲は安堵する。不二咲は普段なにしてんの。あー、どこで遊んでるとか、家でなにしてるとか。不二咲は小首をかしげた。あんまり外では遊ばないかなぁ。あ、でも、大和田くんとか桑田くんはよく声かけてくれるよ。家では、と、不二咲は少し言いよどむ。自分が開発したいと思っているもののことを、江ノ島は理解してくれるだろうか、と思った。顔を上げると盾子もこちらを見ていた。優しい目。不二咲は結局ごまかすように笑う。江ノ島さんってすごいね。仕事とか。がんばってるし。そーでもないよ、と、即座に返事があった。いろいろめんどいよ。でもまぁ、欲しいものがあるからね。欲しいもの?そう、と江ノ島はなんでもないように笑った。不二咲にはわかるでしょ。不二咲は目を見開く。
欲しいものならあった。喉から手が出るほどに。形のないものを欲しがるには不二咲は現実主義に過ぎた。また、弱かった。光に射られ、その眩しさを恐れ、『そうされるのが怖かったから』江ノ島に向かって笑ったりした。江ノ島に蔑まれたくはなかった。自分が、心のどこかで、彼女を取るに足らないものと蔑んでいるように。江ノ島のしろい横顔はそれ自体がひとつの絵画のように美しかった。そうなりたかった。叶うならば、美しく強く咲き誇るひまわりのような女に生まれたかった。江ノ島盾子のような女に。あたしは不二咲のこと好きだよ。唐突に江ノ島は言う。なにを考えてても、これからどう変わってしまっても、あたしは不二咲が好き。だから大丈夫。不二咲は不二咲の思った通りに生きればいいよ。その言葉に、心の奥に隠したものがかたかたとわめく。不二咲の視線に、江ノ島はこぼれるように笑った。あたしたち友だちじゃん。ね、不二咲くん。
こぼれた涙を拭ってくれた指先は、孤独をかき混ぜて渦を生む指ではなかった。緩やかな孤独をかき混ぜてかき混ぜてなかったことにする、魔法のような江ノ島盾子の指先だった。










鈍涙
不二咲と江ノ島。
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