忍者ブログ
ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
[19] [18] [17] [16] [15] [14] [13] [12] [11] [10] [9]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

夜型の人間には夜の楽しみ方などいくらでもあるのに、健全なリア充であるところの彼らはそれを否定ばかりする。山田は憤っていた。明け方に寝てウキウキのお昼休みに合わせて起床し、原稿をこなす傍ら壺の場所で実況及び笑顔のこぼれる場所での新着動画閲覧を始め、そのまま次の明け方まで突っ走る山田のライフスタイルなど、彼らには到底理解など得られそうもなかったからだ。元学園のシェルターにはもちろん各種インフラ設備が完備されており、外界と隔離されるとはいえ外から手に入るものもないわけではなかった。週間跳躍、日曜、王者、薬莢、他にも各種漫画やゲームやDVD等の供給が定期的に必ず行われることを条件に、山田はシェルターに入ることにした。当然突っぱねられてしかるべき要求であったし、そのままシェルター入りもご破算になればいいと思って提示した内容だった。山田は次の世代へ希望を残すためのバトンになどはなりたくなかった。昼のただ中に笑ったり語ったり恋をしたりする、そういう人間は願い下げだった。
江ノ島盾子というのは山田のような人間が忌み嫌いリア充爆発しろと願うところの筆頭のような人間で、頭も尻も軽そうなどうしようもない産廃女だった。クラスの中でもシェルターの中でも、浮いたような浮かないような話題ばかりが付きまとっている。男なら誰でもいいのかと思いたくなるような、その素行は別け隔てがなかった。夜は22時には寝室に引き上げ、夜間の出歩きを禁じるように決まってからも、江ノ島はちゃらちゃらと平気な顔で歩き回ってはときどき原稿に勤しむ山田のところに遊びに来たりもした。最もその決まりは誰も守ってなどいなかったが、それでも言い出しっぺが堂々とルールを無視するのはどうだろう、程度のことは、引きこもり体質の山田でもちらりと思わないでもない。やーまだー。江ノ島がインターホンを連打するので、山田はのそりと座布団がぺたんこになった椅子から立ち上がった。あまり廊下でうるさいと桑田辺りが怒鳴り込んで来かねない。
あのおー。扉を細く開けるなり江ノ島は山田を押し退けるように部屋に入ってくる。でぶでぶ今なにしてたの。言いながら作業机に置かれたパソコンのマウスを勝手に操作している。ちょっと待ったああああ!戦車のように突っ込んでくる山田から華麗に身をかわし、江ノ島はニヒンと笑ってベッドにあぐらをかいた。江ノ島盾子殿ー、拙者締め切り間近で大変焦っておるのですが。封筒に納まるものならばシェルターから外に出すことも可能だった。主催者直々に声がかかったコズミックプリティレイナのアンソロジー原稿にはここ二週間全力で打ち込んでいる。間違ってデータでも消そうものなら山田は江ノ島を一生許さないところだった。江ノ島はくせえくせえとケタケタ笑いながらベッドをころころと転げている。長い脚を強調するようなペチパン姿だが、山田はなんの感情も催さなかった。三次女は産廃、だ。でぶでぶーコーラちょーだい。甘いものは控えているくせに江ノ島は山田の部屋ではよく飲み食いする。
ペプシよりコカの方が好きだ、という点が、一番最初の共通点だった。次はリサ・ローブ。江ノ島がハミングしていたまさにその曲が、もちプリでアレンジされ挿入歌として使われていたのだ。他人のような気がしないね、などという江ノ島の言葉は話し半分に聞かざるを得ない。江ノ島は昼の人間だ。太陽の下で笑ったり語ったり恋をしたりするリア充。江ノ島たちが昼を遊ぶおなじ時間だけ、山田は夜を遊んで孤独に強くなる。あたし夜って好きだよ。週間王者を勝手に読みながら江ノ島は嘯く。だったらルールなんか作らない方がよかったのではござらぬか?あっそれはダメ。江ノ島は顔を上げる。守る気がなくてもルールはルールだから。守れないやつから死んでいくの。ええーそんな大事!?信号と同じよ、と江ノ島は平然と言い放つ。コーラを豪快に飲み干すしろい喉が生々しく動いた。あたしは夜が好きだし、ルールをちゃんと守るでぶでぶも好きだよ。腕で唇を拭って江ノ島はほがらかに笑う。なんと言おうが昼の人間だ。山田にとっては、江ノ島は。
江ノ島たちがいくつもの昼を遊んで強くなるように、山田はいくつもの夜を這って強くなる。そういうときには決まって江ノ島は足音を忍ばせて近づいてくる。昼も夜も遊んで、そのくせに守るべきものを主張する。他人のような気がしない。かつての山田には、夜しか味方がいなかった。山田。江ノ島はベッドに仰向けに横になる。たまには外で遊ぼうよ。そういうことを言うから、江ノ島は山田の中でどうしようもない産廃女に過ぎないのだった。希望も絶望もなく、ただこの中で腐って死んでいけるなら、それが一番いいと思っていた。昼のただ中に、笑ったり語ったり恋をしたりするような、馬鹿げた人間に成り下がるくらいならば。おかしなことに江ノ島とは他人のような気がしなかった。江ノ島にはことのほか夜が似合ったからかもしれない。江ノ島はいつもニヒンと笑って、あたしら友だちじゃんね、と言う。決まってそう言う。
夜は22時には寝室に引き上げ、夜間の出歩きを禁じるように決まったときに、山田の脳をかすかにくすぐったのは、似たようなことを前にも誰かが言っていたな、という記憶にも満たないデジャヴュゥだった。










灯火管制及び戒厳令の序
山田と江ノ島
PR
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
まづ
性別:
女性
自己紹介:
論破されたい。
adolf_hitlar * hotmail/com (*=@)
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]