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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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戦刃むくろの視線は物言わぬそれだけで肉厚のナイフのように鋭く冷たい。背骨に絡まる敵意を優雅に踏みにじり、セレスはわざわざ全身で振り返った。なにかご用ですの。視線の先の戦刃はいつものように暗い目をして、別に、と吐いた。ぼそりとしたその声に、取り立てて敵意も悪意も感じられないことにセレスは内心驚嘆する。単に気に入らないというだけなら一向に構いはしないのだが(好かれるように生きてきたつもりはこれっぽっちもない)、このおもしろくもおかしくも胸も色気もない女になにがしかの思惑があっての敵意だとして、それを他人に対して本気でぶつけようと思っているのならば、セレスはまばたきひとつする間にも蜂の巣にされているだろう。超高校級の軍人という肩書きを舐めたことは一度もないし、その上悲しいかなセレスには蜂の巣にされるであろう理由が両手足の指ほども思いつく。あえて先手を打っておいたが戦刃はなにもしようとはしてこない。戦刃の暗い目は眠り損ねた子どものようだ。つまり、圧倒的な不十分。
セレスは畳み掛けるようににこりと微笑む。お茶のお相手をお探しでしたのなら、申し訳ありませんけれど先約がありますの。戦刃はまばたきをした。そんなつもりはない、のだけど。浮世離れしたという点においてならば大差ないふたりだが、意味合いは天と地ほども異なる。わたくしの背中にゴミでもついていまして?戦刃はその言葉に視線を反らした。斜め下を見るその仕草は何故かはにかんでいるように見える。おや、と内心セレスは首をかしげた。本当に意味のない視線だったのか。それにしては妙に意味深な、絡まるような。用事がないのでしたら、わたくしもう行きますけれど。言うなり戦刃は顔を上げた。あ、うん。すまない安広。その名前では呼ばないでくださいませんこと。やや言葉に力を込めて塗りつけるように言うと、戦刃は素直に頷いた。すまない。セレ、セレスティア、なんとか。もういいですわ。本当に匙を投げつけてやりたい気持ちでセレスは髪の毛を払った。戦刃は胸の前で手を組み合わせてうつむいている。
本当にご用はありませんの?普段のこの女の行動からはやや外れた反応を続ける戦刃に、セレスはいぶかしげな視線を投げかける。大した用事じゃない。消え入りそうな語尾に、ふうんとセレスは頬に手を当てる。盾子ちゃんが。あ、いや、江ノ島が。いちいち言い直さずとも、戦刃むくろと江ノ島盾子が姉妹であることは周知の事実である。さらに、戦刃が江ノ島のことをどうしようもなく愛していることも、セレスたち78期生にとっては今や当たり前のことだった。江ノ島さんがわたくしになにか用ですの?セレスにしては根気強く訊いてやると、戦刃は蚊の鳴くような声で答えた。友だち、作りなさいって。盾子ちゃんが。はぁ?セレスは形のよい眉をしかめる。意味がわかりませんわ。だから。戦刃は暗い目をまたたいて、小さく息をした。いつまでも盾子ちゃんにべったりなのはよくないって。だから、もっと他にも目を向けて、みんなと仲よくなった方がいい、って。戦刃はそれだけ言って、やはりはにかんだように首を振った。
眉間に寄せたシワを指先でほぐすようにしながら、セレスはため息をつく。お伺いしたいのですけれど。戦刃が顔をあげる。どうしてわたくしですの?お友だちになりたいのなら、朝日奈さんや舞園さんの方が易しいですわよ。その言葉に戦刃は、今度は機敏に首を振る。わたしは、不器用だから。不器用なのでしたらなおさら。違う。セレスティアはきっとわたしを怖がらない。セレスは戦刃を眇めた。わたしは、知らない。人との接し方も、友だちの作り方だって。どうしたらいいのかわからないから。だからあの敵意か、とセレスは呆れたような気持ちでまばたきをする。ナイフを突きつけて迫るようなそれを友情と呼ぶようなおかしな女だ。戦刃は。おかしなひと。だからそれを口に出す。お友だちなんていなくても生きてはゆけますのよ。わたくしのように、とは、言わなかった。例えばそれを信じている易しい優しい彼らを、なぜか、庇いたくなった。今、この瞬間だけ。戦刃は困ったような顔をした。困ったような、戸惑うような、今までで一番人間くさい戦刃の顔。
そのとき、ドスドスと響き渡る重たい足音にセレスは眉を寄せた。救われたような気持ちで。おおおこれはこれはセレスティアルーデンベルク殿に戦刃むくろ殿!こんなところでなにをしておられるのですかな?汗だかなんだかでメガネを曇らせた山田は、ふたりを順番に見てなぜか満足げに笑った。ここで出会ったのもなにかの縁ということでーもしよろしければ拙者の次の作品のモチーフとしてご協力を願いたいのですがーああ女王に仕える女騎士というパラレルものでしておふたりには似合いかとーヌホホホホぶっ。山田の腹に痛烈なミドルニーを放ち、セレスはにこりと笑った。構いませんわよ。戦刃はぽかんと開いていた唇を引き締めた。お友だち。なって差し上げてもよろしくてよ。戦刃はなんとも言えない顔をした。困ったような、戸惑うような。あなたのようなひとには、いつか重荷になるかもしれませんわ。きっとあなたはお友だちなんていなくても生きていけますもの。戦刃は首を振った。そして、笑う。嬉しい。セレスはそっと笑い、山田の背中に乗せたままのかかとを引い
て降ろした。
戦刃むくろはおもしろくもおかしくも胸も色気も、恐らくは、ためらいもない女だ。だから忠告してやったのに。セレスは長いまつ毛を伏せるふりをする。きっといつか、この女は後悔する。優しい易しいものに足を取られて、それでも棄てられないものものに、暗い目をするのだろう。悲しむのではなく、ただただ不本意と。自分で選んだにも関わらず、ただ、ただ、不本意と。戦刃はセレスをじっと見た。セレスもにこりと微笑み返す。お友だちって、面倒くさいものですのよ。それでも嬉しそうに戦刃が頷くので、いつか傷つけばいいと諦めた。









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セレスとむくろ。
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