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ダンガンロンパ他二次創作ブログ。 ごった煮で姉妹とか男女とか愛。 pixivID:6468073
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炊きたての米と大根の味噌汁、焼き魚に漬け物、だし巻き玉子にのりの佃煮までが添えられている完璧な食卓に、大和田は眉をひそめた。誰が作ったんだ。湯気を立てるほうじ茶をふうふうと吹いて冷ましながら、さあ、とセレスはにこりと笑う。既に箸を取って食べ始めている一同をいらいらと睨み回し、それでも大和田は空いている椅子にどすんと腰を下ろした。毒でも入ってたらどうすんだ。セレスはやはりにこにこと笑いながら、今のところそんな気配はありませんわ、と歌うように応える。それに、そんなつまらないことをするとは思いませんけれど。視界の端では舞園と大神が給仕よろしく茶碗を取りまとめている。大食漢が揃う食卓は壮観だ。彼女たちは間もなく茶碗に山のように米を盛って戻ってきた。根拠はあんのか。大和田は皿に添えられたたくあんをひとつ口に放り込んで噛みながら問いかけた。うまそうな食事を見て腹は鳴き通しだった。彼女が。セレスはぞくりとするような流し目でテーブルの一端を指す。取り澄ましたような顔で霧切が食事をしているのが見えた。
あの女に毒見役やらせたのか。にぎやかに食事を楽しんでいる周りの様子を見る限り、差し当たって危険はないらしい。それだけ確認して大和田は茶碗を手にした。まさか。こちらも澄ました顔で姿勢よく魚の身を口に運びながら、セレスは呆れたような目で大和田を見る。彼女が、毒は入ってないと断言しましたの。食堂に入ってなにか調べてましたわ。へえ、とその頃には大和田は既に話の内容には興味をなくしており、あっという間に一膳を平らげて舞園を呼びつけた。自分でやりなよーと朝日奈が文句を言ったが、舞園は大和田の言った通りにメガ盛りの茶碗を持ってきてくれた。がつがつと米を掻き込む大和田を嫌そうに見て、おめでたいですわね、と言った。あなたも皆さんも、毒さえ入っていなければなんでもいいだなんて呆れますわ。はぁ、と大和田は顔を上げた。その拍子に口に詰め込まれた中身が少しこぼれる。汚ならしい、という顔を隠しもせず、セレスは両手で持った味噌汁の器に唇を寄せた。
口の中身を飲み下し、メシがまずくなるようなこと言うんじゃねえよと大和田は舌打ちをする。すごんでやろうかと思ったが、予想以上によくできた食事に毒気はすっかり抜かれてしまった。くちい腹を無意識にさする大和田を、今度はセレスはなんとも言えないような顔で見た。幸せですわね。なにか言ってくるかと思ったが、セレスは結局そう言ったきりにこやかに笑って席を立った。いつの間にかセレスの食器は大和田の食器の横につくねられている。優雅な足取りで部屋を出ていくセレスの華奢な背中を視線で追い、大和田は舌打ちをした。さりとてさして腹も立たない。皿に残るのがきれいに身をはがされた魚の骨ばかりだったからかもしれない。大和田の周りにはなんとなく甘やかな気配が残って、それがむずがゆい、とだけ思う。見回した食卓では概ね食事は終わろうとしていた。石丸がむやみに声高に、食器は各々で片付けるよう指示を飛ばしている。立ち上がると椅子が跳ねた。幸せなことだ。
すぐ近くにいた小柄な女生徒にこれ頼むわとだけ言って、食堂を出る。背中に甲高い朝日奈の批難の声が突き刺さるが、構わずに大和田はかかとを引きずりながら歩いていく。あの女の言いたいことはわかるような気がする。どうせ、朝起きたらモノクマが食事を作って待っていたとでも言うのだろう。あほくさくてあくびが出る。あの完璧な食卓の完璧な食事を食って誰ひとり死ななかった、それだけが今の真実だ。ベッドに仰向けに寝転び、大和田は腹を押さえる。問題はそんなことではない。よお。声をかけるとまさに待ちわびたようにモノクマが床から飛び出す。なぁに?無邪気に問いかけるモノクマをちらりと一瞥し、大和田はまた天井を眺めた。気のせいか?なにがぁ?モノクマはふわりと首をかしげた。なぜか、にこにこと笑っている気配をまとわせて。さっきの飯、おれはあれを食ったことある気がする。モノクマはわずかな沈黙を挟み、大和田くんがそう思うならそれが真実さッ、と快活に言った。
しばらく天井を眺めていると、今度はモノクマがねえねえと話しかけてきた。あんだよ。あのごはん、おいしかったでしょう?きみたちのこと考えながら一生懸命作ったんだよぉ。おかげで4時起きです、ヨジオキ!ああそうかいと大和田はモノクマを追い払うように手を振る。懐かしい味だった?不意に滑り込んだ問いに、大和田は答えなかった。しばらく黙っているうちに、ぼくは大和田くんの独り言に付き合うほど暇じゃないんだからねッとぷりぷり怒りながらモノクマは消えていった。大和田は寝返りを打つ。セレスや霧切が危惧するほど、あの食事は危ないものではない。と思う。胸にわだかまるものは、懐かしさなのだろうか。モノクマの言う通りに。そう思うなら、それは真実だと。ああ。大和田は苛立たしく唸ってまた寝返りを打った。なにもかもが気に入らない。気に入らないが言葉が見つからず、大和田は目を閉じた。暗闇に答えが浮かぶかとも思ったが、塗りつぶされたままのまぶたにはただ一筋の光すら届きはしなかった。









良妻賢母の食卓
大和田。
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